
自由時間 (Temps libre)
インタラクティブインスタレーション、 2004年
サミュエル・ビャンキニ(Samuel Bianchini)
プログラミング: エリアン・クレボール(Élian Chrébor)(グラフィック
ス)、 ティエリ・フルニエ(Thierry Fournier)(サウンド)
アニメーション: パトリック・エプネル(Patrick Hepner)、パスカル・
ロド(Pascal Loddo)
制作: Arcadi (Action régionale pour la création artistique et la diffusion en Île-de-France、イル=ド=フランスにおける芸術的創造と普及のための地 方的活動)、Dispothèque
ルマルシャン(Lemarchand)家に感謝いたします。


自由時間, サミュエル・ビャンキニ(Samuel Bianchini), 2004
「ニュイ・ブランシュ 白夜祭(Nuit Blanche)」、パリ、“祭りの夜(Nuit de fête)”コース、ベルヴィル、10月1-2日にかけての夜。
写真撮影 : © Samuel Bianchini - ADAGP
《自由時間》はインタラクティブなインスタレーションである。固定ショ ットで撮影した美しい広大な風景が大画面に広がっている。太陽に照らされ た風景のなか、ターコイズブルーの海に臨んで断崖がそそり立っている。 画像の下のほう、景色に溶け込んで、素晴らしいゴルフコースが2ホールある。 フェアウェイ、そして遠くにはグリーンが見える。
画像の前で鑑賞者が話したり、大声を出したり、音を立てたりすると、音 は増幅され、フィルターにかけられて反響を引き起こす。画像には、無音の ときには少数のゴルフプレイヤーが小さくまばらに見て取れるだけだが、音 がすると反応してゴルファーが増加し、動きはじめる。音声はキャプチャさ れ、メガフォンで増強されるため、画像に命令して容易に動かすことができ る。調子が強ければ強いほど、「抑圧的」であればあるほど、画像の動きは 活発になる。ゴルファーはつぎからつぎへと集まり、動き、さらには滑稽な ほどにおしあいへしあいする。声で命令するにつれ、ゴルファーたちの動作 は繰り返されるようになり、しだいに「強制労働」じみてくる。こうなると、 聞こえる反響は広い開放空間ではなく、閉鎖的な空間を連想させるようにな る。初期状態では、富裕層のための休息とくつろぎの場所、自然と私的にふ れあう場所であったが、いまや激しい活動の行われる古代の劇場の様相を呈 し、条件つきの自由しか与えられない露天掘り鉱山にも似てくる。この画像 は最初は、絵に描いたような社会からの逃避だったが、操作されるほどに罠 へと変じていく。ある状況の変化がなされたのである。つまり、いまや「ゴ ルフプレイヤー=意思決定者」は、命令者となった鑑賞者の言うことを聞く ようになったのだ。このとき鑑賞者はゲームの仕組にとらわれて、「刑吏」 の役にはまってしまう。鑑賞者の画像支配力は、自分がどんな社会的欲求不 満を抱えているかということだけでなく、自分がどのような活動を自由時間 に行う傾向があるかということをも明るみに出すのである。



自由時間, サミュエル・ビャンキニ(Samuel Bianchini), 2004
「スポーツ ファクトリー(Sport Factory)」、グループ展、サンソヴール駅 (La Gare Saint-Sauveur)(リール、フランス)、2012年5月11日-9月2日。
写真撮影 : © Samuel Bianchini - ADAGP





自由時間, サミュエル・ビャンキニ(Samuel Bianchini), 2004
「ニュイ・ブランシュ 白夜祭(Nuit Blanche)」、パリ、“祭りの夜(Nuit de fête)”コース、ベルヴィル、10月1-2日にかけての夜。
写真撮影 : © Samuel Bianchini - ADAGP